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変り種                          1月7日


 シロシキブ(白式部)/
 クマツズラ科ムラサキシキブ属。紫色の果実をつくるコムラサキ(小紫)の変種。コムラサキは本州中部以西の日本と朝鮮半島、中国に分布し、高さ1〜2メートルの小低木、枝は細くて弓上に垂れる。果実は10個前後ずつ固めてつけて、それが枝上に整然と並ぶ。
花言葉は聡明。

▼昨年末、「世界で初めてクローン人間誕生」のニュースに世の中騒然となったが、今日の夕刊に、そのニュースがでっち上げではないか、という記事が載っていた。クローン人間誕生を発表したクローンエンド社からDNA鑑定を依頼されたマイケル・ゲレン氏が、「イブと名づけられたクローン女児に会わせてもらえず、鑑定作業を中止した」と記者会見し、どうも一連の騒動はクローンエンド社を設立した新興宗教団体の宣伝活動ではないか、ということになったらしい。そうだとしたら、なんとも人騒がせな、常軌を逸した行動である。
▼クローン技術で、一番合点がいかないのは、それが生殖、性の存在を全く無視している点にある。生命が誕生したのは40億年前、猛毒物質にあふれ灼熱の原始の海で登場した最初の生命体は、遺伝情報にもとづき、浮遊するアミノ酸の中から自分に必要なものを集めることができた。最初の生命体は、単純に自分と同じものをコピーして増え続けた。
▼しかし、単純に同じものを増やすだけでは、危険が伴う。環境が変化した時、それに適応できないと、一斉に絶滅してしまうからだ。生命の戦略が遺伝子を延々と伝えていくことだと考えればこの画一性はあまりにも無謀だ。そこで生み出されたのが性というシステムだと思う。少しづつ違う異質な遺伝子を混ぜ合わせ環境の変化に対応する様々な多様性を獲得しようとしたのだ。あるものが適応できなくても他に適応できるものがいて、それが増えてくれれば、遺伝子は次へつなげられるのだ。植物も動物も全て地球上の生物は、最初はひとつの生命から出発した。それがこれだけ多様なのはオスとメス、男と女の交わりがもたらす、違うものの創造にある。この多様性が、地球環境の激変にあっても、どれかが生き残り、次の環境に適応して遺伝子を守り続ける、という冗長性を保証しているのだ。温暖化の果てに人類が滅びても必ず他に生き残り繁栄する種がいる。遺伝子の戦略としてはそれでいいのだ。
▼クローン人間の思想は、時間の流れや空間の変化の中で、生き物全体として遺伝子を継承していこうという戦略を逸脱しているように思える。時間の大河からはずれてしまったか細さを感じる。「自分の遺伝子は最高だ、あの遺伝子がいい、よって同じものをつくりたい」という発想は、時間の大河の中で変化しつづける生命全体の潮流をあまりにも軽んじているように思えてならない。
公園の入り口で、まっすぐに伸びた蔓にきれいに並ぶ白い実を発見した。光があたると真珠のように輝いた。帰って図鑑で調べた。おそらくコムラサキの変種だと思う。赤いい実の多い中で、こうした白い変り種は新鮮に見える。しかし、ひょっとしたら数世紀後は、白い実が普通になって赤い実が変り種になっているかもしれない。その変幻自在なところがいいのだ。

▼シェークスピアのマクベス、魔女たちの言葉 「きれいはきたない。きたないはきれい。」
                      
                         
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