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 我々は宇宙的誕生の時代にさしかかっている
                 (4)       2月4日

ノースポール / キク科 の1年草。原種はアフリカ北部アルジェリアなど地中海沿岸に分布している。 日本には1960年代頃に伝えられた新しい花。 花つきがよく、株全体をおおうほどに白く 咲くところから「北極」のイメージが連想され、 そこから「ノースポール(北極)」と呼ばれる。 ・マーガレットより小型、道端の花壇によく植えられる。 ・別名「クリサンセマム・ノースポール」 クリサンセマムとはラテン語で ”金の花”を意味する。

▼宇宙に散ったコロンビア号にいましばらく思いを馳せたい。
▼コロンビア号の7人の乗組員の中に、イスラエル人初の宇宙飛行士がいた。イラン・ラモン氏、48歳である。祖父を強制収容所で亡くし、母親はアウシュビッツからの生還者である。育ったイスラエルでは、パレスチナとの憎しみと報復の連鎖が延々と繰り返されている。イスラエル空軍に所属したラモン氏は第4次中東戦争などいくつもの戦闘をこなし、湾岸戦争ではイラクの核施設空爆に参加した。
アメリカのイラク攻撃がカウント・ダウンに入ったこの時期、イスラエルの国民的英雄として送り出されたラモン氏はどんな気持ちで宇宙へ旅立ったのか。
▼ラモン氏はコロンビア号に一枚の絵を持ち込んだ。ナチスに虐待された少年が強制収容所でひそかに書いた「月の風景」という写真だ。「月に行くことなど考えられなかった時代、しかも最悪の状況の中で月に思いを馳せた少年の魂を宇宙へ持っていく」と、ラモン氏はインタビューで答えている。
▼宇宙飛行5日目、地上ではイスラエル軍によるガザ市へ侵攻が続いていたこの日、ラモン氏は、シャロン首相の質問に答え宇宙からメッセージを送った。
  
(シャロン首相)     我々に見えなくて、そちらから見えるものはありますか?
 (ラモン宇宙飛行士)  宇宙から見ると、地球はとても美しく、本当に調和がとれています。いつまでもこのままであってほしいものです。
                                                      

▼ 宇宙飛行が最後に近づいた1月29日のコロンビア号内の様子が、NASAの記録に残っている。 船内ではジョン・レノンのイマジンが流れていた。穏やかな地球を眺めながら、ラモン氏はヘブライ語と英語で次の言葉を繰り返したと記されている。
「宇宙から見ると眼下の地上にはどんな境界線もない」

▼ 生命はなぜ、いまある心地よい環境を飛び出してあえて過酷な場所に飛び込んでいくのだろうか。その解答のひとつに「、いままでの自分を俯瞰するための視点を得るためだ」というものも用意されていていいと思う。いや、過酷な新天地への大冒険を経てふと振り返った瞬間に、あらたな視点を手にいれる、といったほうがいいのかもしれない。
 ミトコンドリアという獰猛な輩をあえて飲み込むという大冒険をした古細菌は、自在に動けるエネルギーを得た。その結果、これまで自分がいた熱水鉱床がいかに小さな場所だったかを知る。はじめて陸に上がった生命は、振り返ってこれまで自分がいた海がいかに広大かを知る。そして、
宇宙にでて初めて生命は地球全体を俯瞰する。宇宙飛行士たちのいうコズミック・バース(宇宙的誕生)には、この宇宙からの視点を得ることの偉大さを内包されている。

▼地上では国家間の逃げ場のない外交ゲームが展開されている。その渦中でコズミック・バース(宇宙的誕生)などを口走る輩は、「戦略的思考」の持ち主の皆さんからは、単純な情緒派として一笑にふされるのかもしれない。しかし、世界が混迷する渦中のコロンビア号の大惨事は何かを暗示しているような気がしてならない。

▼ ノースポールが日本に入ってきたのは1960年と新しい。もともとは地中海の国々の路傍に咲く花である。イスラエルでも花を咲かせていることだろう。戦火の道をゆく兵士やテロリストの中にも、この白い健気な花にひと時、心奪われる若者がいてほしい。
                          2003年2月4日
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