トップページにもどります

気のいい村役場の書記   2月12日

メジロ / メジロ科(世界でおよそ80種日本で2種) アフリカ、インド、東南アジアからオーストラリアにかけて主産、日本では1種類が留鳥。雌雄同じ色。緑や緑灰色の種が多く、目の周囲には絹糸状の白い羽毛が生えている。地鳴きはチー、チー。警戒声はキリキリキリキリ。チーチュルチーチュルチチルチチルチュルチーなど早口でさえずる。秋には熟した柿に集まり、春にはウメ、サクラ、椿の花蜜を吸う。移動の時には数十羽の群れをつくる。(フイールイドガイド日本の野鳥より)

▼いつものカフエにAは約束の時間より5分遅れでやってきた。
「ごめんごめん」気のいい笑顔で縮しながら席についた。その風情は学生時代と少しも変わらない。授業には必ず出席し、いつも一番前でメモをとるAのノートを我々は便利に回し季節ごとの試験にのぞんだ。A はそんなことには頓着せずに、のんべんだらりと過ごす我々の相手を陽気にこなした。上級国家公務員試験にもなんなくパスし霞ヶ関の官僚となり、今は政府に近いところで奔走している。

▼学生時代の友人たちの近況を一通り情報交換した後、やはり話はイラク攻撃や北朝鮮の核開発の問題におよぶ。フランス・ドイツが査察継続を強く求め国連は二分しそうな勢いだ。反戦を求める各国の世論も日増しに大きくなっている。それでも日本政府は米英の武力行使決議案を支持するのだろうか。この疑問に対してのAの解答である。

▼Aの考えの骨子「旧ソ連・東欧が崩壊したあと欧州には差し迫った脅威がない。それに欧州にはNATOという強固な集団安全保障がある。それに比べて日本には北朝鮮という脅威が相変わらずある。イラクの次は北朝鮮である。その時、北東アジアにはNATOのような集団安保の仕組みはない。日本は安保条約を通じての『日米同盟』をよりどころにするしかないんだよ。最近の北朝鮮のぎりぎりの瀬戸際外交を見ての通り、日米同盟が北への抑止力になっている。仮に北朝鮮が暴発したとしたら自衛隊だけでは対応できないことは明白。米軍は必要。日米同盟を韓国とも連携してやっていく以外に方法はない。だからイラク問題で日米同盟に亀裂を生じたくない。だから米英のイラク攻撃新決議案を支持するし米国との協調姿勢は変えられない・・・」

▼国連の安全保障理事国が明解な意見を出し論戦を続ける中、相変わらず、小泉首相の発言はノラリクラリしている。一方で国民に気を使いながら「国連の議論を見守りたい」といい、米国に対しては「がんばれ」とエールを送る、いったいどっちなんだとマスコミ批判が寄せられる。
「こうしたノラリクラリ以外に今は仕方ないんだよ」というAの話に、司馬遼太郎がいう「村役場の書記の頼りなさ」を思った。確かにこうした、困った、困った、といいながらノラリクラリする今の日本政府の態度は、すべてを丸くおさめるる得策かもしれない。短絡的に公に反戦を訴えれば米国のタカ派になんといわれるかわからない、かといって米国支持を積極的に打ち出せば、反戦気分が盛り上がりつつある選挙民に総すかんを食らう。これ以上、支持率を下げるのは怖い。よって、右往左往、煮え切らない態度になる。 

▼短い時間のよもやま話を終え、Aは午後からの長い会議に向かった。その後ろ姿を見ながら、
気のいい村役場の書記係という言葉を思った。
イラクの次は北朝鮮だ、という。その時、米軍が日本を守ってくれなければ大変なことになる、という呪縛。本当に米国は北朝鮮にイラクほど興味を持つだろうか。イラクの次は中東支配へと、興味の矛先をそっちのほうへ広げていきはしないか。もし、米軍が去っていったらどうするのか、その時の展望はあるのだろうか、平和憲法という大きなフレームの中で、もし仮に米軍が興味を失い日本を去るという選択をした時、村はどうするのか、近々、村役場の書記係りたちにじっくり聞いてみたい。

▼この草木花便りに初めて動物が登場した。梅林公園で白梅にカメラを向けていると、そのフレームの中にメジロが飛び込んできた。へっぴり腰で思わず何枚もシャッターを切った。そのほとんどはボケていたが、本人はこの幸運の一瞬を写真に残すことができただけで満足である。
甘い蜜があるからメジロがやってくる。メジロはお返しに花粉を運ぶ・・・この世の中は、勝った負けたのゼロサム・ゲームだけではないのだ。お互いが得をするノン・ゼロサム・ゲームが意外に多いのだという事実を今一度、しっかりと確認したい。
                     2003年2月12日                  
トップページにもどります