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  市民の憲法         5月3日

クリンソウ(九輪草)/サクラソウ科の多年草。別名シチジュウソウ(七重草)、七階草ともいう。山間部のやや湿ったところに生える。日本産のサクラソウの中最も大形。淡い赤紫の花を車輪状につけ、それが数段になる。その姿が五重の塔の先端部にある「九輪」と似ていることから、その名がついたとされる.


▼拉致被害者の蓮池薫さんの兄、透さんが憲法記念日のきょう、どこかの集会で「拉致」について、『これは憲法が保障する基本的人権を踏みにじるものだ』と、発言しているのを聞いた。
▼拉致に関して、最近は北朝鮮の核問題と重なって、教条的な北朝鮮批判ばかりが強調され、なんだか気味悪い。「困ったものだ。申し訳ない」と最初はうなだれていた在日の友達も、「最近の日本は本当に怖い。」と言い出した。確かに無責任な北朝鮮批判が鼻につく。
▼朝鮮半島に住む人々は、38度線によって肉親は親戚が離れ離れになっている、という現実をを背負っている。北朝鮮が暴発したり、そこを攻撃すれば、傷つくのが肉親だと知っている。なんとか、穏やかな解決はないのか、と気が気でない在日の友人の気持ちも理解できる。
▼20世紀が生み出した国民国家というシステムは本当に個人を救い守ってきたのだろうか。振り返れば、国家という大儀の前で盲目になり自制心を失った失敗の残渣ばかりが目に入る。拉致被害者やその家族も北朝鮮という国家によって分断され、さらに日本という国家によって放置されてきた。被害者たちに沸々とたぎっているのは「国家」というシステムに対する不信感なのだ。
太平洋戦争が終わり茫然自失の日本人にアメリカ軍は「上からの民主化」を断行した。天皇の臣民を市民に変質させることで、大日本帝国というシステムを解体しようとした。日本の指導者達は、黙って民主化の風が通り過ぎるのを待った。焼け野原に書類を焼く黒い煙が立ち昇った。隠蔽と責任回避の中で指導者達が沈黙する中、アメリカ軍の理想主義者は猛然と頭に描いた民主化を断行した。
▼基本的人権、戦争放棄をうたった日本国憲法は1946年2月に米軍の総司令部が提案し、9ヵ月後に公布された。電光石火のスピードだった。古い既得権に縛りついていたものが身動きできない一瞬の出来事だった。
▼当時もアメリカの保守派がせせらわらったという、青臭い理想主義に溢れた日本国憲法は、国家というものに対峙する市民憲章である。これは国民国家が解体した後の世界共通の市民憲章に充分なりうる。
▼その時沈黙していた官僚や経済人はやがて表に出てきて、再びリーダーとして躍り出た。そして経済成長という錦の御旗のもと、ひたすら膨張した。彼らは戦前と変わらず既得権を得た。そして、自分たちが物言う間もなく忽然と公布された憲法を最後の“宿題”だと位置づけた。その親の元で育った2世や3世の中にも、「勝手に自分の領地に入り込んで作られた憲法」という苦い思いを引き継いだ。
▼一方、護憲を名乗る革新?政党も、本気で憲法前文の掲げる基本的人権などと対峙しなかった。国民一人一人を“細胞”とする北朝鮮は、戦争被害者としての怨念を「今度は加害者となり仕返そう」という大儀にまみれた。日本の革新?政党は、「独裁者の国家戦略に挟まれ市民が人権を踏み躙られる」という北朝鮮の現実を知りながら見過ごした。覚せい剤密輸も不正資金流出も知りながら見過ごした。彼らも既得権から抜け出せなかった。

▼拉致被害者は国家という大儀に翻弄され、基本的人権を踏み躙られた市民である。その怒りは北朝鮮そして日本という国家システムに向かっている。

▼姜尚中氏の言葉 「北であれ南であれかつての日本であれ、汚れのない国家はない。いつでも被害者から加害者に反転しうる。国家や民族は自己同一化する対象ではない。むしろ今、個人としてどう国家に向き合うかが問われている。」

We the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National
Diet, determined  that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of  peaceful
cooperation with all nations and the blessing of liberty throughout this land, and resoleved
that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government,do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish
this Constitution.
 日本のわたしたちは、正しい方法でえらばれた国会議員をつうじ、わたしたちと子孫のために、
かたく心に決めました。すべての国々と平和に力を合わせ、その成果を手にいれよう、自由の恵みを、この国にくまなくいきわたらせよう、政府がひきおこす恐ろしい戦争に二度とさらされないようにしよう、と。わたしたちは、主権は人々のものだと高らかに宣言し、この憲法を定めます。

Government is a sacred trust of people, the authority for which is dedrived from the people,
the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of
which are enjoyed by the people.
 国政とは、その国の人々の信頼をなによりも重く受け止めてなされるものです。その権威の源は、人々です。その権限をふるうのは、人々の代表です。そこから利益をうけるのは、人々です。

This is a universal principle of mankind upon which this Constitution is founded. We reject and revoke all constitutions, laws,ordinances,and rescripts in conflict herewith.
これは,人類に共通するおおもとの考え方で、この憲法は、この考えをふまえています。私たちは
この考え方とは相容れないいっさいの憲法や、法令や、詔勅をうけいれません。そういうものに従う義務はありません。

We the Japanese people,desire peace of all time and are deeply conscious of the high ideals
controlling human relationship,and we have determined to preserve our security and existence,trusting in the jyustice and faith of the peace-loving peoples of the world.
日本の私たちは、平和がいつまでもつづくことを強く望みます。人と人との関係にははたらくべき気高い理想を深く心にきざみます。私たちは、世界の、平和を愛する人々は、公正で誠実だと
信頼することにします。そして、そうすることにより、わたしたちの安全と命を守ろうと決意しました。
We desire to occuoy an honored place in an international  society  striving  for  the  preservation of  peace,  and  the  banishment  of  tyranny  and  slavery, oppression  and
intolerance  for  all  time from  the eath.
わたしたちは、平和をまもろうとつとめる国際社会、この世界から圧政や隷属、抑圧や不寛容を永久になくそうとつとめる国際社会で、尊敬されるわたしたちになりたいと思います。

We recognize that all people of the world have the right to live in peace, free from fear and
want.
わたちたちは、確認します。世界のすべて人々には、恐怖や貧しさからまぬがれて、平和に生きる権利があることを。

We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political  morality  are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and jyustify their sovereign relationship with other  nations.
わたしたちは、信じます。自分の国さえよければいいのではなく、どんな国も、政治のモラルを
守るべきだ、と。そして、このモラルにしたがうことは、独立した国であろうとし、独立した国として
ほかの国々とつきあおうとするすべての国のつとめだ、と。

We the Japanese people,pledge our national honor to accomplish these high ideals and purposes with all our resources.
日本のわたしたちは、誓います。わたしたちの国の名誉にかけて、この気高い理想と目的を実現するために、あらゆる力をかたむけることを。
                      池田香代子 訳 やさしいことばで日本憲法 より


                          2003年5月3日
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