葉っぱのフレディ (2) 5月6日
☆ けれど 楽しい夏はかけ足で通り過ぎていきました。たちまち秋になり 十月の終わりのある晩 とつぜん
寒さがおそって来ました。
フレディも 仲間のアルフレッドも ベンも ぶるぶるふるえました。
みんなの顔に 白く冷たい粉のようなものがつきました。朝になると 白い粉はとけて 雫がキラキラ光りました。
「霜がきたのだ。」とダニエルが言いました。もうすぐ冬になる知らせだそうです。
☆ 緑色の葉っぱたちは一気に紅葉しました。公園はまるごと虹になったような 美しさです。アルフレッドは濃い黄色にベンは明るい黄色に クレアは燃えるような赤
ダニエルは深い紫色に そしてフレディは 赤と青と金色の三色に変わりました。
なんてみごとな紅葉でしょう。
☆
いっしょに生まれた 同じ木の 同じ
枝の どれも同じ葉っぱなのに どう
してちがう色になるのか フレディに
はふしぎでした。
「それはねー」とダニエルが言いまし
た。「生まれたときは同じ色でも い
る場所がちがえば 太陽に向く角度がちがう。月の光り 星明り 一日の気温 なにひとつ同じ経験はないんだ。だから紅葉するときは みんなちがう色に変わってしまうのさ。」
☆ 風が変わったのは そのあとでした。夏の間 笑いながらいっしょに踊ってくれた風が 別人のように 顔をこわばらせて 葉っぱたちにおそいかかってきたのです。葉っぱはこらえきれずに吹き飛ばされ まきあげられ つぎつぎと落ちていきました。
☆「さむいよう」「こわいよう」 葉っぱ
たちはおびえました。そこへ 風のう
なり声の中からダニエルの声が
とぎれとぎれに 聞こえてきました。
「みんな 引っ越しをする時がきたんだよ。とうとう冬がきたんだ。ぼくたち
は 一人残らず ここからいなくなるんだ。」
☆ フレディは悲しくなりました。ここはフレディにとって 居心地のよい夢のような場所だったからです。
「ぼくもここからいなくなるの?」
「そうだよ。ぼくたちは葉っぱに生まれて 葉っぱの仕事をぜんぶやった。太陽や月から光をもらい雨や風にはげまされて 木のためにも他人のためにもりっぱに役割を果たしたのさ。だから 引っ越すのだよ。」とダニエルは 答えました。
「ダニエル きみも引っ越すの ?」とフレディはたずねました。
「ぼくも引っ越すよ。」
「それはいつ?」 「ぼくのばんがきたらね。」 「ぼくはいやだ!ぼくはここにいるよ!」
とフレディは 大声で叫びました。 (つづく)
※「葉っぱのフレディ」(レオ・バスカーリア作 童話社)より
|