葉っぱのフレディ (3) 5月7日
☆ アルフレッドもベンもクレアも そのとき が来て 引っ越していきました。見ていると風にさからって 枝に
しがみつく葉もあるし あっさりはなれる葉っぱもあります。やがて木は葉を落として 裸同然になりました。残っているのは フレディとダニエルだけです、
「引っ越しをするとか ここたらいなくなるとか きみは言っていたけれどそれはー」とフレディは胸がいっぱいになりました。
「死ぬ ということでしょ?」
ダニエルは口をかたく結んでいます。
「ぼく 死ぬのがこわいよ。」とフレディが言いました。「そのとおりだね」とダニエルが答えました。「まだ経験したことがないことは こわいと思うものだ。でも考えてごらん。世界は変化しつづけているんだ。変化しないものは ひとつもないんだよ。春がきて夏になり秋になる。葉っぱは緑から紅葉して散る。変化するって自然なことなんだ。君は春が夏になるとき こわかったかい?緑から紅葉するとき こわくなかっただろう?ぼくたちも変化しつづけているんだ。
死ぬというのも 変わることの一つなのだよ。」
☆ 変化するって自然なことだと聞いて フレディはすこし安心しました。枝にはもう ダニエルしか残っていません。
「この木も死ぬの?」
「いつかは死ぬのさ。でも、いのち”は永遠に生きているのだよ。」と
ダニエルは答えました。
☆ 葉っぱも死ぬ 木も死ぬ。そうなると 春に生まれて冬に死んでしまうフレディの一生には どういう意味があるというのでしょう。
「ねえ ダニエル。ぼくは生まれてきてよかったのだろうか。」とフレディはたずねました。ダニエルは深くうなずきました。
「ぼくらは 春から冬までの間 ほんとうによく働いたし よく遊んだね。まわりには月や太陽や星がいた。雨や風もいた。人間に木かげをつくったり 秋には鮮やかに紅葉してみんなの目を楽しませたりもしたよね。それはどんなに 楽しかったことだろう。それはどんなに幸せだったろう。」
☆ その日の夕暮れ 金色の光の中を ダニエルは枝をはなれていきました。
「さよなら フレディ。」
ダニエルは満足そうなほほえみを浮かべ ゆっくり 静かに いなくなりました。
フレディは ひとりになりました。
(つづく)
※「葉っぱのフレディ」(レオ・バスカーリア作 童話社)より
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