うちの子に限って 7月13日
ランタナ / クマツヅラ科ランタナ属。別名はシチヘンゲ(七変化),コウオウカ(紅黄花)。花は咲いてから時間が経つに連れて黄色からだいだい色,赤へと色が変わる。シチヘンゲ(七変化)と呼ばれているのはこのため。 花言葉は厳格。
▼職場が渋谷にある。毎日見る風景の中で、最近異様に感じるのが深夜群れをなす普通の中高生と思える子供たちだ。この子たちの親のうち何人が今自分の子供が渋谷をうろついていることを知っているのだろうか。
▼携帯電話の急速な定着が大きな渦を巻き起こしている。「いまから渋谷にいこうぜ」簡単なメールのやり取りであっという間に約束が成立し子供は集まり家を抜け出す。親が気づく余裕はない。さらにネットで全国各地から見ず知らずのものがあっという間に渋谷のカラオケボックスに集まりパーティが始まる。果ては覚せい
剤の売買情報もネットで流れ平然と渋谷の町で取引が行われる。不景気の中で行き場を失った風俗産業、麻薬密売はあらゆる最新の流通回路を使い、こうした無防備なローティーンを巻き込んでゆく。
▼ネットの中で子供たちが彷徨っているその横で、高度成長期に生まれバブルの中で青春に酔いしれたリッチチャイルド世代の親たちは「仕事より生活、普通の楽しい生活」を拠り所に、すべて面倒なことを考えることを拒否した燃え尽き症候群に陥っている。かくして「うちの子に限って」という根拠もない楽観主義が蔓延する。
▼2年前の9月、新宿歌舞伎町を襲ったビル火災は4階で営業していた風俗店を呑み込んだ。その犠牲となった12人の風俗嬢の多くはごく普通の少女たちで、どの親も娘が働いていることは知らなかった。「なぜうちの娘があの店で働いていたのか?」 今も親たちは自問自答を繰り返している。
「まさかうちの子に限って」という楽観は、死というものには誰もがつねに隣り合わせているのに「死は自分には関係ない、老人のものだ。」と跳ね除ける若者の傲慢に似ている。
▼深夜、タクシーで団地に帰る。ドアを開けて外に出ると、異様な奇声をあげて屯する高校生の群れがいる。疲れていて注意する気力もわいてこない。キューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」を思い出す。キュブリックの予見どおり、陰湿な暴力を内在した異様に明るい世紀がやってきたのだ・・・。 ふと見ると、その中に息子がいた。
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