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 今年の広島・平和宣言2003年8月6日

 キョウチクトウ(夾竹桃)  / キョウチクトウ科キョウチクトウ属。原種は地中海から南アジアに向けて3種類が分布。そのうちのインド原産種が江戸時代末期に渡来した。現在はこのインド原産種と、地中海沿岸原産のセイヨウキョウチクトウの二種類。排気ガスなどに耐えるので、街路樹や道路の側塀に植えられることが多い。転勤の時期に咲き乱れるので転勤花と呼ばれることもある。花言葉は、用心・油断大敵。

広島の平和公園の8月6日は今年も猛暑となった。炎天下の中、公園には夾竹桃の花が咲き乱れる。夾竹桃は広島の人々にとって縁の深い花である。一面、瓦礫の焼け野となった広島の大地に最初に赤や白の花を咲き染めたのが夾竹桃だった。夾竹桃は再生の象徴である。
▼朝、テレビの画面に映し出される広島平和式典の模様に、釘づけになった。今年の式典は久しぶりに率直な怒りを露にし毒のある充実感に溢れていた。



▼秋葉市長の平和宣言の全文。

『今年もまた、58年前の灼熱地獄を思わせる夏がやってきました。被爆者が訴えつづけてきた核兵器や戦争のない世界は遠ざかり、至るところに暗雲が垂れ込めています。今にもそれがキノコ雲に変わり、黒い雨がふりだしそうな気配さえあります。
▼一つには、核兵器をなくすための中心的な国際合意である、核不拡散条約体制が崩壊の危機に瀕しているからです。核兵器先制使用の可能性を明言し、「使える核兵器」を目指して小型核兵器の研究を再開するなど、「核兵器は神」であることを奉じる米国の核政策が最大の原因です。
▼しかし問題は核兵器だけでありません。国連憲章や日本国憲法さえ存在しないかのような言動が世を覆い、時代はまさに戦後から戦前へと大きく舵を切っているからです。また米英軍主導のイラク戦争が明らかにしたように、「戦争が平和」だとの主張があたかも真理であるかのように喧伝されています。しかし、この戦争は国連査察の継続による平和的解決を望んだ、世界の声をよそに始められ、罪のない多くの子供、老人を殺し、自然を破壊し、何十億年も拭えぬ放射能汚染をもたらしました。開戦の口実だった大量破壊兵器もいまだ見つかっていません。
▼かつてリンカーン大統領が述べたように、「全ての人を永遠に騙すことはできません。」そして、いまこそ、私たちは「暗闇を消せるのは、暗闇ではなく光だ」という真実を見つめなおさなければなりません。「力の支配」は闇、「法の支配」が光です。「報復」という闇に対して、「他の誰にもこんな思いをさせてはならない」という、被爆者たちの決意から生まれた「和解」の精神は、人類の行く手を明るく照らす光です。
▼その光を掲げて、高齢化の目立つ被爆者は米国のブッシュ大統領に広島を訪れるように呼びかけています。私たちも、ブッシュ大統領、北朝鮮の金総書記をはじめとして、核兵器保有国のリーダーたちが広島を訪れ核戦争の現実を直視するよう強く求めます。何をおいても、彼らに核兵器が極悪、非道、国際法違反の武器であることを伝えなくてはならないからです。同時に広島・長崎の実相が世界中により広く伝わり、世界の大学でさらに多くの「広島・長崎講座」が開設されることを期待します。
▼また、核不拡散条約体制を強化するために、広島市は世界の平和市長会議の加盟都市ならびに市長に、核兵器廃絶のための緊急行動を提案します。被爆60周年の2005年にニューヨークで開かれる核不拡散条約再検討会議に世界から多くの都市の代表が集まり、各国政府代表に、核兵器廃絶を目的とする「核兵器禁止条約」締結のための交渉を、国連ではじめるよう積極的に働きかけるためです。
▼同時に、世界中の人々、特に政治家、宗教者、学者、作家、ジャーナリスト、教師、芸術家やスポーツ選手など、影響力を持つリーダーの皆さんに呼びかけます。いささかでも戦争や核兵器を容認する言辞は弄せず、戦争を起こさせないために、また絶対悪である核兵器を使わず廃絶させるために、日常のレベルで祈り、発言し、行動していこうではありませんか。
▼また「唯一の被爆国」を標榜する日本政府は、国の内外でそれに伴う責任を果たさなくてはなりません。具体的には「作らせず 持たせず 使わせない」を内容とする新・非核三原則を新たな国是としたうえで、アジア地域の非核地帯化に誠心誠意取り組み、「黒い雨降雨地域」や海外に住む被爆者も含めて、世界の全ての被爆者への援護を充実させるべきです。
▼58年目の8月6日、子供たちの時代までに、核兵器を廃絶し戦争を起こさせない世界を実現するために、新たな決意で努力することを誓い、全ての原爆犠牲者の御霊に心より哀悼の誠をささげます。』


▼苦い顔をした首相の顔が映し出される。「広島はあいも変わらず、青いことばかり言っている、現実の世界はそんなに簡単に割り切れない。誰だって核兵器がないにこしたことはない、と思っている。それがそういかないのが現実なんだ。単純にアメリカを非難するわけにはいかない現実があるではないか、日米同盟を堅持することが日本の安全保障にどれだけ大きな意味を持っているのか・・・・まったく、広島は相変わらず、<反米左翼」>に染まっている、早くこの異様な空気の場所から離れたい・・・・・」 (一時間後には首相は大阪に向かう新幹線の中にいた)

▼列席した一人の北朝鮮被爆者のつぶやき 「もっと北朝鮮の核問題をきびしく攻撃してもいいのに。何を遠慮しているのだろう。かつて反核運動が北朝鮮の工作活動に利用されたことがこれだけ暴かれているのだから、カーン博士が持ち込んだ技術を使って核兵器開発が進んでいることも自明の理である。その過去を払拭するためにも、広島は強く北朝鮮を攻撃すべきなのに・・・・・相変わらず、奇妙な抑制をするもんだ・・・何を遠慮しているのだろう 」
▼なぜヒロシマは北朝鮮のことをもっと強く非難しないのだろうか。平和宣言の中にも堂々と盛り込んでほしかった。アメリカなど既存の核保有国も、闇のネットワークを使い核開発を進める国家も、同じ線上に並んでいる。それを俯瞰せずに、そこに奇妙な配慮があったとしたら、時代錯誤もはなはだしい。

▼北朝鮮の核開発のことが全く触れられなかったことをのぞき、今年の平和宣言がアグレッシブに見えたのは具体的な提案に溢れていたからだろう。
 @ ぜひとも広島に、ブッシュ大統領、金総書記、ムシャラフ大統領、、パジパイ首相・・・・を呼び寄せてほしい。本気で実現してみせてほしい。

 A 世界の平和都市結束に動き出す提案に期待する。その延長線上に「新・非核三原則」を位置づけよう。各都市が「新・非核三原則」を掲げる運動をぜひとも実現してほしい。
 ただし「新・非核三原則」に日本政府の主体性を求めるのは無謀な夢である。もはや、国家や政府は、青臭い@搗z主義では動くことのない。

 21世紀に必要とするものは世界的な市民運動へと連動するネットワーキングである。広島はその起点になりうる。相変わらず、広島は反米左翼≠ニ切り捨てる老兵たちを乗り越え、さらに戦後左翼運動の隠微な部分から抜けきれない権威主義者たちを切り捨てて、しなやかで現実的なネットワークづくりにまい進してほしい。

 いずれにしても、今年の平和宣言は気概に溢れていた。
                          2003年8月6日
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