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    晩秋に開くピンクの花    11月14日

 コダチダリア(木立ちダリア)/キク科ダリア属。英名はツリー・ダリア原産地はメキシコダリアの原種、草丈が3〜4メートルにもなる。晩秋、日照時間が短くなるとピンク色の花を咲かせる短日植物。
コダチダリアの花言葉は見つけることができなかったが、ダリアの花言葉は、華麗・移り気・不安定・優雅・威厳・感謝・気紛れ・エレガンス
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 ▼晩秋の小石川植物園。紅葉の向こうに、すくっと立つ植物、その先端にピンク色の花弁が青空を背景に可憐な賑わいをみせている。望遠レンズを取り出しそっとシャッターを切った。

▼ バレーボールのW杯に日本中が沸いている。キーボードを叩き始めた今まさに、日本女子はキューバと対戦、試合は2対2で最終セットにもつれ込んでいる。今年の日本女子
チームにはこれまでにない粘りを感じる。絶体絶命のピンチの中でも笑顔がある。緊張感を気迫に変える力がある。
▼この試合、滑り出しから追いつめられた日本は、控えの佐々木みき選手を投入した。その途端にチームが活気づいた。栗原恵、大山加奈という19歳の新星にレギュラーの座を奪われベンチを暖めているが、いざ投入されると驚くべき活躍をする。ベ
ンチで溜め込んだエネルギーを一気に吐き出すオーラが溢れる。
▼今月3日の韓国戦、不振の大山に代わり、2セットの途中から出場した佐々木は20点を稼ぎ、日本を劇的な逆転勝利に導いた。その強烈な個性はまるで宝塚の大舞台に立つスターのようだと思った。ゲームが終わった後、もう一度佐々木の姿を探した。劇的な熱戦を終えた佐々木は何事もなかったように淡々と控えめな女性に戻っていた。あのコートでの煌きをもう一度観たいと思った。
▼その後、栗原、大山が活躍する中、佐々木は再びベンチを暖めた。淡々とタオルをレギュラー選手に手渡す姿に何か次への予感を感じた。それが今、このキューバ戦だったのだ。疲れの見えた栗原がベンチで声援を送っている。コートでは佐々木がオーラを放ち、それに引っ張られるように大山が高橋が徐々に本領を発揮しはじめる。不思議なことに周りが光を放ち始めると佐々木のオーラはひそやかになり表情もおだやかになる。彼女の中にあるオーラはチームが絶体絶命の危機に瀕したときに漸く発火するのではないか、と思える。

▼今、最終セットが終わった。日本がキューバを15対13で下した。劇的な逆転勝利だ。大きな興奮が観客席を、コートを波打つ。この試合のMVPに佐々木が選ばれた。マイクが佐々木に向けられる。興奮するアナウンサーを見て、「おかしい。わらってしまいそう。」というがそっけない。淡々とした面白みのない表情だった。佐々木にとって、まだまだ、この試練の舞台は序の口なのかもしれない、と思う。
▼若い選手にレギュラーの座を奪われ、じっとベンチでエネルギーを蓄え、チームが絶体絶命に瀕した時、さっそうと現れる跳人。その雄姿に胸ときめかすのは私だけではないだろう。佐々木が「孤高のストライカー」と呼ばれる所以がわかるような気がする。

▼まわりが秋の色を深め枯れ急ぐ中、突然、ビンク色の花を咲かせる木立ちダリアを、この激戦を制した日本女子、その中でも佐々木選手に捧げたい。晩秋の枯れ野に際立つピンクの花が君にはよく似合う。
 アテネへの夢をつないだキューバ戦勝利。すっかり佐々木フアンになってしまった。

                          2003年11月14日
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