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   坊や どうか夢から覚めて  11月28日

 シロガネヨシ/イネ科シロガネ属。
洋名はパンパスグラス。南アメリカ(アルゼンチン)生まれ。大きな株をつくり、高さ2〜3メートルもある花穂を何本ものばす。葉は剃刀のようで子供には危ない。

光耀、人気。

▼ 11月の最終木曜日、アメリカ国内は感謝祭、17世紀にメイフラワー号に乗ってアメリカ大陸に渡ってきたピューリタンたちがようやく生活が軌道に乗ってきたことを感謝し、家族が一同に会し七面鳥の丸焼きが食卓に並べて祝う。
今年の感謝祭、ビックリ箱が大好きな坊やはまた突拍子もない行動に出て、パーティに出ていた皆を驚かせ、つかのまの人気者になった。

ブッシュ大統領が大統領専用機でバグダッドを電撃的に訪問、バグダッド国際空港内で、感謝祭をするために集められた600人の米軍兵の前に現れた。米大統領がイラクを訪問するのは歴史上はじめてである。滞在はわずか2時間半で、すべては極秘に実施され、専用機がバグダッドを出発後、パーティの映像が世界に配信された。
▼この映像を見ながら、また溜息がでる。まったく変わっていないその行動原理に大きな不安を感じる。大統領の周りにはハリウッドから派遣された専属のシナリオライターがいて、彼はイラク戦争後も解任されることなく相変わらずマンネリ化したシナリオを書き続けているようだ。

▼大統領の劇的なバグダッド訪問は明らかに米兵の士気を鼓舞し米国内の世論を引き締める狙いがある。米軍への攻撃は激化しイラク復興への先行きに悲観的な空気が広がっている。22日にはバグダッド空港で民間貨物機が武装勢力にミサイル攻撃され翼に命中した。しかもその映像が世界に配信された。今回の電撃訪問はそれに対する返礼だろう。「我々は多くの厳しい犠牲を払い、独裁者をうち倒し、2500万人の人々を解放した。それは、殺し屋や暗殺者らを前に撤退するためではない」と、夕食会の席上で大統領は駐留を継続する姿勢を強調するが、彼には何か一番大切なものが欠けているように思えてならない。

▼「 せっかくイラクの人々を解放したのに何故こうした混乱がつづくのか?それは背後でテロリスト・アルカイーダの集団が操っているからに違いない。ならば彼らを掃討しよう。」大統領は再び戦闘モードになった。国防省は19日、「クルミを割るのに大きなハンマーを使う」、「これは戦争だ」(スワナック司令官)と宣言し、大規模兵力の使用を正当化し、アメリカは抵抗勢力の大規模掃討作戦を始めた。その名前は「アイアン・ハンマー」作戦、「アイビー・サイクロンU」作戦。再び航空戦力の大規模投入や精密誘導兵器が使用されていく。
米航空母艦エンタープライズから飛び立ったジェット機が、キルクーク北部の町の付近の標的に1000ポンドの爆弾を投下したと米陸軍は述べた。他の戦闘機は2000ポンド爆弾をバクバ周辺に投下した。バグダットの北、約65キロの反対勢力が強い町である。サダム・フセインの故郷の町であるティクリットでは第四歩兵師団が、野戦砲、戦車、ヘルファイア・ミサイル[米陸軍・海兵隊のヘリコプターから発射されるレーザー誘導式対戦車ミサイル]で標的を攻撃した。バグダットでは第一機甲師団が、(抵抗運動の)戦士たちによって使用されていたと見られる場所への夜間攻撃−軍事作戦を続行した。・・・これは戦争以外のなにものでもない。
▼この力による大規模掃討作戦を軍事専門家は「ハンマーでハエを叩くようなもの」と形容しその戦術的な誤りを指摘している。さらにこの爆撃の下でまた多くの民衆が犠牲になっていることを忘れてはならない。突然の空爆が人々にどのような恐怖と不信感を植えつけるか?また肉親を失った遺族の憎しみがどこに向けられるのか?この掃討作戦がまた新しい抵抗戦士を生み出してはいないのか。これはもう「テロとの戦争」ではない。ベトナム戦争の再来である。

▼このイラク戦争は湾岸戦争を経験した人々の「幼い夢」から始まった。911の悲劇はこの「稚拙な夢」に利用されたのだ。父を越えてみたいと思った息子、あの時できなかったことを今度は成功させたいと切望する側近たち。湾岸戦争に出遅れたことで国際的な信用を致命的に失ったと歯軋りするある同盟国の指導者たち・・・・

▼「アイアン・ハンマー」作戦が続く中、なんの前触れもなしに、テレビ画面の中に現れた米国大統領にどれだけのイラク国民が共鳴するだろうか。テレビの中の舞台がバグダッドだと言われてもだれがリアリティを持てるだろうか。全ては大統領選挙に向けたパフオーマンスに見えてくる。また米国のパフーマンスがイラク国民を置き去りにし、毎日、身を粉にして復興支援のために奮闘する現地スタッフたちの仕事をやりにくくしている。
 かつてドゴールが言った言葉が身にしみる。「アメリカという国は重大な問題に際して、複雑な国内問題と子供っぽい感情を持ち込む国だ」                    

▼大統領、  感謝祭を祝して、先日、手にした相田みつを の 言葉をあなたにおくりたい。
   「うばい合えば足らぬ 分け合えばあまる。うばい合えば憎しみ わけ合えばやすらぎ」

                          2003年11月28日
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