<最終更新日時:

     あの路地の角     3月11

クモマグサ(雲間草)/ユキノシタ科サクシフラガ(ユキノシタ)属。。別名、サクシフラガ。高山の雲間に生えるので「雲間草」というこの名がついた。草の丈は4から5センチと背の低い植物。 変種には「チシマクモマグサ(千島雲間草)・エゾノクモマグサ(蝦夷の雲間草)」がある。属名Saxifragaは、ラテン語の「サクスム(石)」と「フランゴ(割る)」に由来している。園芸店で売られているクモマグサは、日本の高山に自生しているクモマグサとは別種で欧州産の洋種クモマグサ。茎が地面を這うように伸び、春に直径2〜3cmの可愛い花を咲かせる。花言葉は「深い愛情」。

▼ 地下鉄大江戸線の「西新宿3丁目」の出口から地上に重い体を押し上げて、しんどそうに、山手通り沿いのバス停を目指す。毎朝の憂うつな通勤路、その気分をわずかながら前向きに変えてくれる清涼剤がその途上にある。
▼喧噪の山手通りにつながる細い路地の一角にあるゴルフ用品ショップ、その店先に並べられる花々はいつ見ても元気で瑞々しい。その艶やかさを目指して歩く。その活気の源、店の女主人がきょうも表にでて丁寧に花々に水をやっている。私の通勤時刻が、女主人の規則正しい花との対話時刻と重なる。

▼何日前から気になっていた花があった。本格的な花の季節の到来の先陣を切って、ここ数日、桃色の可憐な花が小さな鉢に次々と咲き始めたのだ。今朝、思い切って、「写真,撮ってもいいですか。」と声をかけた。もちろん、人の良さそうな女主人は大歓迎で、「どうぞどうぞ、この花の名前、なんていうか知っている?」「いいえ」 「クモマグサ」と微笑みながら教えてくれた。

▼その名前を「蜘蛛馬草」と勝手に思いこんでいた私は、帰って植物図鑑を引き、それが「雲間草」というとても風情のある名前だと初めて知って感激している。高山の岩場、雲の間を這うように咲く花だそうだ。花言葉は「深い愛情」。コンクリートに囲まれた騒然とした岩場の一角、道端植物園の主人が目をつけるにふさわしい花だと思った。
▼この「雲間草」を皮切りに女主人は今年、どんな花を咲かせていくのか、あの路地の角、毎朝、目が離せない季節が始まる。

                      2004年3月11日