冬のソナタとオンディーヌ   6月13

ビヨウヤナギ(美容柳)/オトギリソウ科オトギリソウ属。中国原産のの半落葉低木.雄しべが長く繊細な花。「美容柳」とは、花が美しく葉が柳に似ていることから来ている。「未央柳」とも書く。花言葉は「気高さ」。

▼一条の光に応えて、美容柳の繊細な雄しべの一本一本が浮かび上がっているのを見た。貴婦人のドレスのように、確かにこの花は「気高い」。
▼吉原幸子のオンディーヌという詩が好きだ。その中の一説「純粋とはこの世でひとつの病気です。」というフレーズが何かの拍子に浮かび上がることがある。最近、爆発的なブームになっている「冬のソナタ」を観ているとき、このフレーズが思わず口からでた。
▼なぜ、こんなに女性達が、とりわけ中年の女性達がこのドラマに熱中するのだろうか。そう思って観てみると、こちらも目が離せなくなる。“純化”することへの作者やディレクターの並々ならぬ情熱を感じ、「純粋とはこの世でひとつの病気です。」という言葉が素直に呼び起こされる。そしてきょう偶然、道端で見かけた光に輝く一瞬の美容柳は、この融合した純粋という熱玉にうまく共鳴している。「冬のソナタ」のシーンを思い出しながら、美容柳の煌めきを添えて、オンディーヌを読むことにしよう。

  オンディーヌ     T

 水
 わたしのなかにいつも流れるつめたいあなた
 純粋とは
 この世でひとつの病気です

 愛を併発してそれは重くなる
 だから
 あなたはもうひとりのあなたを
 病気のオンディーヌを
     さがせばよかった

 ハンスたちはあなたを抱きながら
 いつもよそ見をする
 ゆるさないのが あなたの純粋
 もっとやさしくなって
 ゆるさうとさへしたのが
 あなたの堕落
 あなたの愛

 愛は堕落なのかしら いつも
 水のなかの水のように
 充ちたりて
 透明なしづかないのちであったものが
 冒され 乱され 濁される
 それが にんげんのドラマの
 はじまり
 破局に向かっての出発でした

 にんげんたちはあなたより
 重い靴をはいている
 靴があなたに重すぎるのは 
 だれのせいでもない

 さびしいなんて
 はじめから あたりまえだった
 ふたつの孤独の接点が
 スパークして
 とびのくように
 ふたつの孤独を完成する
 決して他の方法ではなされないほど
 完全にうつくしく

     ※オンディーヌは[まで続く

▼「冬のソナタ」を観ながら、ふと、あまりにも現実の営みの中にそのナルシスを投げ捨ててしまった自分の肉体を思う。肉体はもはやなんのオーラも発しない塊となって醜く横たえているだけだ。その醜悪からそっと抜けだし、蛍のように純粋という光点を羽ばたかせてみたい。
いまや視聴率20%に届こうとしているこのドラマに魅せられている無数の中高年は、同じような郷愁の中にいるのだろう。
 

                      2004年6月13日