冷気の中の感度 1月3日
トチノキ(栃・橡・七葉樹)/トチノキ科。落葉高木。北海道、本州、四国、九州、中国に分布する。低山地帯の谷筋や山腹の
水分の多い肥えたな土地を好む。並木道として有名なパリのマロニエ、このマロニエはトチの兄弟でセイヨウマロニエと呼ばれ、。日本でも街路樹として見ることができる。材として使うのは
ほとんど天然材のトチノキである。和名の由来には、トは十で実が多いことを表すという説や、朝鮮語のtotolに由来する説などがあります。花言葉は、「ぜいたく」。
▼トチノキを見に公園に向かう。その樹は冬の青空を突き刺すように今年もそこで裸身を伸ばしていた。
5月には白い小花をすずなりに咲かせ、7枚の小葉をもつ掌のような可愛い葉を一杯に引き連れる。あの天狗のうちわはトチノキの葉を模したものだと聞く。
果実は10月頃に熟し、イボイボした丸い実が枝にいくつ かつく。この黄褐色に熟したカラが3つに裂けて、中から赤黒い色のつややかな実がこぼれ落ちる・・・・再びはじまる賑やかな日々を前に、すべてを捨て去った裸身に冷気が突き刺すように吹き抜ける。その冷気と裸木の様子を見ながら、今年を占うと、案外、波乱はあるだろうが、早過ぎもせず遅すぎもせず、季節は巡っていくのではないだろうか。ここ数年でもっとも穏やかな一年になるのかもしれない。こんなに異常気象の中で、のんきな予想をたてるのは冒険かもしれないが、これがトチノキの下に立った時の今年の直感だ。
▼木はまわりの空気を読みながら、自らの振る舞いを決めていく。いや、空気に制約を受けながらと言った方がいいかもしれない。空気の機嫌をキャッチするアンテナの感度が鈍った時、容赦なく樹は枯れはてる。冬、天空に伸びる無数の枝には、空気を読みとろうとする懸命な樹の意志がこめられている。
▼スマトラだったかタイだったか、津波の襲来を事前に察知したゾウの列が観光客を置いて逃げ去ったという記事を読んだ。自然の空気と絶えず対峙する生き物たちは、この大津波の中、無事、逃げてきって生き延びたに違いない。それにくらべて、ビデオに映し出された人類の行動はあまりにも無防備であっけない。いつのまにか、空気との交換を忘れ、自分たちのシナリオだけに酔ってしまった人類の脆さを思い知らされる。
▼毎日、コンクリートの檻の中に通いつづけ居心地のいいサロンのような職場で居心地の良い会話を交わすことを繰り返す中で、自分も、鈍感で傲慢な振る舞いにまみれているのかもしれない。空気を読めなくなった樹は、あっという間に枯れはてる。
▼冷気のなかで懸命にアンテナを張り巡らすトチノキの下、サロンと決別し空気と交信できる本性を取り戻さねばと思った。
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