余りに唐突に駆け抜けて、逝った友に
2005年3月30日
その時、私は岸辺の菜の花の中にいた。
ふとレンズを向けたその瞬間、私の前を
低空飛行で飛び立った白鷺は、
たちまち黄昏の彼岸に遠景となって
消え去った。
西日の斜光に添うように、
一塵の風が差し込んだ。
残された私は、
偽善と悪徳と体裁と謀略と怠慢と卑屈と傲慢と粗野と贅肉と愚鈍にまみれ、
呆然と立ちすくんでいる。
私たちの前を純白の航跡となって駆け抜けた、その一瞬を奇跡的にフイルムに焼き付けた私の古びたカメラは、 堅い決意と共に君を忘却することを拒絶する。
その岸辺の菜の花の前を、またたくまに飛び去った白い鳥の航跡を私たちは忘れない。
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