草に秋=萩
               2005年9月23日   

萩(はぎ) Lespedeza

マメ科ハギ属

 属名は、アメリカフロリダ州知事だったV・M・デ・セスペデス(Cespedes)にちなみますが、誤植によりLespedezaとなった
 ハギは「生え芽(はえき)」の意味で、古株から芽を出すことから名付けられた。花言葉は、思案・前向きな恋・想い・内気・物思い
(「花言葉in ていんくの家」より)

小石川植物園というところは何度行っても飽きない。草むらの中をぶらぶら歩いて見ると、思わぬものに出会う。日本庭園に向かう草の中から萩の小さな桃色が覗いていた。なんだかとても奥ゆかしくて艶っぽい登場だ。草かんむりに秋と書いて萩、萩は秋を告げる可憐な野花だ。万葉の昔から多くの歌に詠まれてきた。万葉集では140種余りも詠まれていて、数から言えば一番多い。あの梅の花を凌いでいる。


▼一見、鬱蒼としているが、その緑の葉の中から様々な顔を覗かせる小さな桃色花に誘われるままにレンズを向ける一時はなかなかである。そして、花に近づいてあらたな発見する。ここの群生の花々は単純な桃色ではない。白と桃色がほどよく溶け合っている。神社の梅の木に結びつけられたおみくじのようだ。ひとつひとつに儚い願いがこめられているようで、愛らしい。どんな種類かな、と悩む間もなく、そこが植物園のいいところで、「ソメワケハギ」(染めわけ萩)という表示板をみつける。。


▼日本庭園に通じる細い道筋を、一見雑然としたソメワケハギの草むらで埋め尽くしたのは、明らかに制作者の意図があるのだろう。無造作な細い道を辿っていくのは最初はちょっと心細い。この先に本当に庭園があるのか「あれ、、迷ってしまったのかもしれない。」一瞬、そう思った時に、草むらのなかに淡い小さな赤を発見する。何げなく飛び込む草の中で、様々な花の、清楚で時につややかで時にかよわい仕草に誘われながら足を進める。
▼小指にも満たない小さな野花に接写レンズで思いっきり近づいて行くとき、そこに精霊が宿っているのではないか、と錯覚する不思議な感慨に襲われる一瞬がある。遠慮がちだが実は情熱的で、危険な香りも漂わせる、目には見えないなにか大きな精気がそこに漂っているのを感じる。

▼そうやって、導かれるままに草むらを抜けると、そこには整然とした日本庭園が広がっている。遠くにサルスベリの木々が赤く、白く、薄曇りりの淡い光を受けて輝いていた。旅人は新天地で再び赤と白の饗宴を満喫できる仕掛けになっているのだ。

                      2005年9月23日