吾も赤いぞ!!
             2005年10月14日  

吾木香・吾亦紅・割帽額・地楡(われもこう) Sanguisorba officinalis

バラ科ワレモコウ属

 学名のSanguisorbaは、ラテン語で「血」を意味する言葉と「吸う」を意味する言葉を組み合わせたもの。なんだか恐ろしい名前だが、古くから止血薬として用いられていたところから名付けられたらしい。
 漢方では「地楡(ぢゆ)」、葉が楡(にれ)に似ているところから名付けらした。その根を煎じた汁で口内炎や喉の痛みの時のうがい薬に使われる。
 花びらのように見える部分はガク。花びらは退化している。
ワレモコウの花言葉は、感謝・変化・愛慕

▼高知に住む弟からのメール、最近は愛息の自慢話が満載だ。 「息子は、毎日夜6時から9時半まで卓球の練習に通っています.ほとんど休憩のない厳しい練習です。高知でも厳しさでは有名なその倶楽部を自分で選択し,通いはじめて一年になります。中学受験の盛んな高知では,塾に通う暇もなく毎日卓球をしている息子を,『卓球でメシが食えるわけでないのに,大丈夫ですか?」と言う人もいます。でも、と思うのです。こんなに打ち込めることがあって息子は,幸せではないかと。親の希望なり,世間体ではなく,息子には自分の意思で,納得いくまできわめて欲しいと思っています。
  先日,四国大会県予選があって息子は県代表になりました。来年の全国大会出場もいよいよ現実見を帯びてきました。親父さんとの夢のような約束を息子は,果たしそうになってきました。最期まで親父さんは,自分が後援会長になるといっていましたから。」

▼闘病していた父にとって、卓球に打ち込む孫の姿は輝く希望だった。見舞いに来た弟に、愛孫が全国大会に出るときは自分が後援会長をやると、突然、言い出した。その時、甥は卓球をはじめたばかりで、その唐突な夢に、話を聞いた私も笑ったものだが、父が亡くなって一年、それが実現しそうだという。弟が歓喜するのもわかる。それ以上に、あれから1年間今も毎日、練習に打ち込んでいるという甥の努力に敬意を表したい。弟夫婦にとって、故郷の母にとって、甥の活躍ぶりは真紅の薔薇の花、愛情を一身に集めた希望の花だ。若い人のまぶしい活躍は本当に清々しく美しい。
▼息子の活躍を瑞々しく書きつづった弟が、それから2週間後、再びメールを送ってきた。今度は自分のことが書いてある。
「先日9日,テニスのシングルの試合がありました。高知県テニス協会が主催するものです。高知でテニスをはじめて四年、シングルの試合に出るのはこれで2回目です。もちろん初級でエントリーですが、前回は惨敗、まったく満足にいく試合内容ではありませんでした。あれから1年、とにかく相手のコートにボールを入れることだけを
心がけていました。なんとベスト8。ベスト4決定戦では、大学生のスピンボールに打ち負け0−6の完敗でしたが、継続して努力していれば結果がでるということをはじめて経験したような気がしています。
 僕にとって,高校時代は苦痛以外の何物でもなかったのですが、放課後図書室の窓からみるテニスコートは輝いていました。しかし,テニスをする前に人間関係が面倒くさく。高知でテニスを始めたとき、『テニスをうまくなりたいなら,足の動くときにシングルをやることだ」といわれました。たまたま昔シングル上級で優勝の常連であったNさんと妙に馬が合い,練習をつけてもらえることになりました。未だに勝つどころか3ゲーム以上取ったことがありません。次回は二月,今度は中級でエントリーしようと思っています。・・・・」
 卓球に打ち込む息子に感化され、「おれだって」と言わんばかりに、弟のテニスもいよいよ本格的になってきたようだ。微笑ましい便りだった。

▼秋の野辺に、ワレモコウが暗紅色の小さな花を咲かせている。決して派手ではないが、この暗紅色の花園を見かけると、ほっとする。ワレモコウは薔薇科の植物である。ワレモコウという名前は、「吾木香」とも「吾亦紅」とも書くらしいが、私は「吾亦紅」をとりたい。同じ薔薇科の真紅の薔薇の花のように派手やかな美しさはないが、「俺だって薔薇科だ。俺だって赤いぞ。」とピンとその存在を誇示しているような風情がぴったりだからだ。「吾も赤いぞ」   伸び盛りの若者達、油の乗り切った職場の若手の働きぶりを横目で見ながら「俺だって。」と粋がって見せる自分を思い出すようで、なんだかグッと自意識をくすぐる名前だ。だから「吾亦紅」がいい。ただ、吾亦紅が花として誇示しているのは実はガクらしい。本当の花はとっくに退化してしまっているのだという。  うーん、複雑な心境だ。

                      2005年10月14日