逆転の妙案
2006年7月12日
▼最近、わが団地の風景に小さな変化があった。
▼2年前、私たちが管理組合の役員をやっていた頃、団地内では違法駐車が絶えなかった。なんとかならないか、思案の末に,営繕担当の役員が中心になって、U字ブロックの数を増やして並べた。黄色いブロックは見た目は確かにあまり芳しくはなかったが、違法駐車はなくなった。
▼これで一件落着と思いきや、広報担当の私のもとには、こんな不満の声が影に日向に聞こえてくるようになった。「なんとも景観が悪くなった。鬱陶しい。あの黄色い放列はものものしい。」 環境を重んじる住民にとっては、この措置は不快だったらしい。
「さて、どうしたものか。」と思っているうちに、私も役員の任期を終え、再び、仕事に埋没する日々に立ち戻り、月日が流れていた・・・・。
▼ところが、今年に入って、この問題が一気に解決を見た。ある時、黄色いブロックのいくつかが、プランターに入れ替わったのだ。これはいい、しかし、金がかかっただろうに、倹約をモットーとする我が団地としては、異例の奮発だなあ。無責任に近づいてみて、びっくりした。そのプランターとは、ブロックをひっくり返して、両側に手作りの板枠をはめ込んだものだった。その中に土を入れ、思い思いの植物が植えられていた。これは見事な妙案だ。
▼それからしばらくしたある日、ブロックをひっくり返してプランター作りをするTさんに出会った。
「久しぶりです。」「おおー、いいところにきた。手伝ってくれ。」 Tさんは、団地の「花のボランティア」のリーダーだ。我々の時代に団地を占有したブロックの放列をずっと不快に思っていた。そして、ある時、それを逆さまにしてプランターにする、という妙案に辿り着いた。そのアイデアに、団地の管理人のAさんが乗った。器用なAさんはすぐに木枠を作って見せた。あっというまに「逆転の妙案」が現実化した。
▼「考え続けていればアイデアがでてくるもんですね。」
だれをも傷つけない見事な折衷案を私は心の底から激賞した。
「そんなに褒められると気持ち悪いなあ。」 いやいや、お見事。一つのアイデアが、大きなわだかまりを溶かしてしまったのだ。大変な英知だ。
なんとも含蓄のある妙案、以来、この逆さまのブロックの前を通るたびに、教えられている気がする。
天下の義を壱同す。是を以て天下治まる。(墨子)
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