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                    春の“冬知らず”
               2007年3月21日

 
フユシラズ(冬知らず)
    キク科の一年草

別名を「カレンデュラ」、「キンセンカ(金盞花)」と同じ仲間。花期は、冬から春にかけて咲くので「寒咲きカレンデュラ」ともいわれている。真冬でも次々と直径1pくらいの金盞花に似た花をつける。冬枯れの野に一際、明るいスポットを作りだしてくれる。
花言葉は、不安・悲しみ














▼墓参りに郷里に帰った。実家の花壇に、今年は「冬知らず」がずらりと植えられている。聞けば、友だちが分けてくれたそうだ。
▼いつもなら、冬の間、寂しい枯野で、木枯らしにももろともせずに咲き誇り、本格的な春の訪れと共に枯れてゆく、逞しく潔い生き様をみせてくれるのだが、今年、郷里に咲く「冬知らず」はちょっと様子がちがう。まだまだ、蕾がたくさんついており、これからも咲き誇る気配である。
▼いつものように、カメラを片手にぶらりぶらりと、町を歩いて驚いた。至る所に、「冬知らず」の群生があった。駐車場の一角にも、ゴミ収集のスポットにも黄色い花々が咲き誇っている。まるで、去り時の「春」の到来に気付いていないかのようだ。

▼異常気象が続いている。今年は季節そのものが「冬知らず」だ。東京はとうとう初雪もないままに、春に突入しそうだ。各地で2週間も早く梅が咲き、1週間以上も早く桜の開花宣言がでる。その一方で、突如として、急激は冷え込みも訪れる。つまり、案配がよくない。極端から極端にぶれる天候が重なっている。

▼地下に強い根を張る、「冬知らず」に開花のスイッチを入れるのは、例年なら、霜まじりの冬の冷気であろう。それが今年は、なかった。あったとしても継続しなかった。そのため、開花のチャンスを逸してしまった「冬知らず」は、今年はその名誉ある名前を返上し、他の春の野花と共に、まるでこぶりのキンセンカとして路傍に咲くはめになったにちがいない。



▼いつもなら、彼岸に帰省する私の目にとまることもない、「冬しらず」をいたるところで見つけると、やはり、今年の天候の異常を実感する。冬を忘れた季節のおかげで、「冬しらず」という花の個性が奪われてしまった。春咲く鮮やかな花々と、一緒に咲く「冬しらず」は味気ない。やはり、君は、木枯らし吹き荒ぶ荒涼とした冬野に一人、毅然と咲き誇り、道行く人々に「もう少しの辛抱だ。この後には春が来る。」と教えてくれる孤高の花でいてほしい。

▼季節の移ろいが、どんどん大雑把になっていくようで、面白くない。

                          2007年3月21日
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