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          余命いくばくもないのに

        2008年4月5日            

 





















        花海棠(はなかいどう)                  Malus halliana
      バラ科リンゴ属

別名、かいどう(海棠)、すいしかいどう。カイドウの仲間は北半球の温帯に約30種が分布。この中から食用として改良されたのがリンゴ、観賞用そしてミカイドウ、ウケザキカイドウ、ハナカイドウの三種が育てられた。原産地は不明だが、中国では古くから栽培、その薄桃色の花がほのかに酒気を帯びた楊貴妃のうたた寝の顔にたとえられた。
 花言葉は、友情・温和・美人の眠り
 




▼「楊貴妃がうたた寝する姿に瓜二つ」とはよく言ったものだ、今年も、花海棠のうす紅色の下で、ぼんやりと4月のひとときを過ごす。大勢でやってきたカメラ愛好家の中から声がする。「私も、いじめられている後期高齢者
だ・・・。」 どっと笑い声。鈴のように揺れる花海棠の花弁。

▼ここ数日、にわかに巷を騒がせているのが、4月から始まった「後期高齢者医療制度」、この制度はいつ成立したのか、新聞のスクラップをめくった。2006年の6月14日の夕刊に「医療改革法が成立」という見出しがあるものの、その新制度について詳しく論じた記事は見あたらなかった。当時は「小泉国会劇場」の最終章、、懸案法案が「小泉構造内閣の総仕上げ」として次々と与党単独による強行採決で成立した。一方、マスコミの報道は、小泉首相の後継者問題に多くの紙面を割くものの、“四半世紀ぶりの高齢者医療制度”について丁寧な説明はほとんどなされていない。その結果として、“国民の多くは何も説明を受けていない”まま、寝耳に水の、年金天引き通告となった。

▼花海棠の樹の下で・・・・・・
 「浮かないねえ。」
「余命いくばくもない者をねえ。」
「後期高齢者なんてずいぶん統計的な記号だねえ。」
「聞いただけで、意欲なくなるねえ。」
「せめて、名前には配慮してほしかった。」
「さっそく首相は名前を代えるよう指示したらしい。」

「“後期高齢者”やめて“長寿”」
「それも場当たり的だねえ。芸がないねえ。」
「75歳すぎたら切り離される気がしていやだねえ。」
「それにしても、始める前にもっと説明ほしかった。」
「年寄りには理解できないとでも思っているのかしら。」

▼もう10年前に聞いた小咄・・・・・
 ある病院での待合室。高齢者の患者でごった返す。
「おはよう。」「おはよう。」
「あれっ、今朝はAばあさんの顔が見えないねえ。」
「ほんとうだ。どうしたのかしら。」
「病気になったんっじゃないのかい。」・・・・・・
 この話を、笑い話として披露したのは、医療制度改革にアドバイザーとして参画していた友人だった。素直には笑えなかった。・・・・・
 「老人を甘やかしすぎる。健康な老人までただで薬もらうために病院に通う。医師はどんどん薬を出す。街のいろんな病院が別々に同じ薬を一人の老人に出す。無駄な薬と検査漬けに老人をしていく。」
 「でもねえ、余命いくばくもない老人が、不安になって、いてもたってもおられずに病院の待合室にいくのもわかる。不安を解消できる場がほかにないんだよ。」
「そうだなあ。まず、医療費を使わないために健康な老人をつくる。予防に金を使う。老人を薬漬け、検査漬けにしないために、かかりつけ医、家庭医、全人医療の体制を整備する。」
「それでも、不安は取り除けないと思うよ。」

▼ふたたび、花海棠の樹の下で・・・・
 「みんな、子供には迷惑かけたくない、と思っているんだよ。だから不安でねえ。」
「だから、ちょっとしたことも気になって病院へ行く。」
「これからはあまり病院には行かないようにするよ。」
「気がねしなくてもいいんだよ。これまで一生懸命働いてきたんだから。」
「みなさん、花海棠も今週まで。次回は花水木の下に集合します。」
「みんな、元気でね。」
「幸せな気分でこの世とお別れしたい。」
「余命いくばくもないのだから、遠慮する必要ないよ。」
「楊貴妃のうたた寝、っていいましたか。うたた寝するように逝きたいねえ。」

▼「後期高齢者」という記号を生み出したのは、厚生労働省のどういう人だろう。その官僚にはどんな親がいるのだろうか。親の期待を一身に背負って、地方から上京し、東大法学部を卒業し、息子は官僚となった。自慢の息子を育て上げた親は、それから数十年してはっとする。
 「あんなにりっぱな息子を育てたのに、気が付けば、自分はひとりぼっち、息子は振り向きもしない。」
 そんな親不孝な子供達のせめてもの償いとして、余命いくばくもない親たちが不安なく日々を過ごせるような、そんな社会保障制度を最優先したい。

    人生の扉

作詞:竹内まりや  
作曲:竹内まりや


春がまた来るたび
 ひとつ年を重ね

目に映る景色も 
少しずつ変わるよ

陽気にはしゃいでた 
幼い日は遠く

気がつけば五十路を
越えた私がいる

信じられない速さで 
時は過ぎ去ると 

知ってしまったら
どんな小さなことも
覚えていたいと 
心が言ったよ

I say fun to be 20
You say it's great to be 30
And they say it's lovely to be 40
Bue feel it's nice to be 50

万回の桜や 色づく山の紅葉を
この先いったい何度 見ることになるだろう
ひとつひとつ 人生の扉を開けては 感じるその重さ
ひとりひとり 愛する人たちのために 生きてゆきたいよ

I say it's fine to be 60
You say it's alright to be 70
And they say still good to be 80
But I'll maybe live over 90

君のデニムの青が 褪せてゆくほど 
味わい増すように
長い旅路の果てに 輝く何かが 誰にでもあるさ

I say it's sad to get weak
You say it's hard to get older
And they say that life has no meaning
But I still believe it's worth living
But I still believe it's worth living


2008年4月5日