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               インセンティブ

         2008年11月20日            

▼瞬きする間もなく、世界は未曾有の経済危機となり、日本経済も急速に下降している。「気を揉んでもねえ。」公園散策の先輩は醒めた表情であまり関心を示さない。
 。▼急速に進む経済危機の中で、与野党は奇妙な「見合い」を始め、相手の出方をそれぞれが伺いながら、ロックがかかり、無作為なまま時間がながれていく。誰も悪者をつくらないいつもの仕掛け。
▼「派遣切り」が進んでいる。企業にしてみればこういう時のための派遣労働なのだ。危機に瞬時に対応するためにこのシステムをつくったのだ。何を躊躇しているのだ・・・大学の同窓会で、こう主張する友人の声が耳に残る。
▼名古屋発のニュースリポートで、橋の下に住む日系ブラジル人の男性を取り上げていた。研修生として来日し、自動車部品工場で働いてきた。来日して何年なのか、妻子はいないか母国へかえしたのか、覚えていないが、その男性が橋の下のダンボールの前で、「ブラジルに帰る金もない。家族もいない。どうしようもない。」とポルトガル語で絶句する姿にはさすがに考えさせられた。外国人労働者から外国人市民へ!20年前に連呼されたが、結局、彼等は労働者としての調整弁として存在し、日本社会で暮らす市民としての基盤はいまだ脆弱なままであることが露呈した。


▼「どうすりゃいい。」と先輩は言う。「こういうのはどうですか。」「市が, 調理できるワゴン車を彼等に無料で貸し出し、公園で営業できる場所を優先的に提供する。そこで本場仕込みのブラジル料理を安く売りながら生計をたてる。」「こうしたブラジル・ワゴンにだけ通じるクーポン券をつくる。市民はこれを持っていけば料理が買える。集めたクーポン券は、日系ブラジル人の子弟の教育費として使う。」「そのクーポン券の原資は?」「定額給付金のうち2000円をブラジル・クーポン券にまわす。各地方で、アイデアを出し給付金の使途を決めていけば?」 「でも、商売はじめるまでにいろいろ規制がありそうだねえ。」「そうですかねえ。」

▼「こういうのはどうですか。」「派遣切りにあった外国人労働者、優先的に環境政策の仕事を斡旋する」「太陽電池パネルを全国の学校やホール、公共施設に設置する。その工事を外国人労働者、優先にまず集中的におこなう。その建設ノウハウを次にそれぞれの母国で活かせるように彼等にインセンティブを与える。」「日本の太陽電池システムを、海外に人材つきで送り出す、そういうビジネス・モデルをつくるのも面白い」・・・・・
人々はさまざまなインセンティブ(誘因)に反応する 
 ※意思決定に際してはインセンティブが大事な役割を果たすということは、公共政策を立案する人々にとっては重要である。公共政策は、しばしば、私的な行動の費用と便益を変化させてしまう。政策によって人々の行動が変化することを政策立案者が考慮しなければ、その政策は意図せざる結果をもたらす可能性もあるのである。 <マンキュウ経済学 ミクロ編 より>

▼散策の先輩が、いたく気に入っているビジネスがある。定年後、趣味ではじめた野菜作りだが、最近、収穫した野菜を買いとってくれる業者が現れた。有機農法で張り切って作ったものの、ここ数年は収穫が多すぎて、大阪の息子や親戚に送ったり親戚に配っても余ってしまう。どうしようかと思っていたら、買い取ってくれるという。これで、畑仕事にいっそう熱が入るようになった。

2008年11月20日