ハルジオ(春紫苑) キク科ムカシヨモギ属
北アメリカ原産で大正時代、1920年頃に渡来し、関東を中心に広がったが、戦後になって全国に分布するようになった。茎は直立して上部で分枝する。蕾のときにうなだれる性質がある。同じ外来種のヒメジオンは似ているが蕾はうなだれない。花が紫苑(秋に花を咲かせるキク科の多年草)に似ていることから、牧野富太郎博士が命名した。
▼テニス・コートを飛び出したボールを追ってカリンの樹の下に潜り込ん
だ。その影に咲くハルジオンに一条の光があたっている。一枚目の写真はその時、撮ったもの。愛らしく撮れたと満足している。ピンク色の蕾も可愛い。
▼道端のどこにでも見かけるハルジオンだが、その姿が際立つのは木漏れ陽を浴びた瞬間だ。時には喜んで踊りだしそうな気配もみせる。大正時代に観賞用としてアメリカから渡来したが直ぐにブームは去り飽きられたらしい。しかし、その繁殖力を発揮しハルジオンは草むらや道端に図太く根を張り、いまや日本の春にはすっかりお馴染みになった。
▼ハルジオンは昔から気に入っている花なのだが、ちかごろ、ハルジオンにとっては屈辱的であろう一文にであった。
「ハルジオン。どうにも仕様のない雑草で、日本国中見ないところはなくなってしまった。大正中期に北米から渡来した越年草だが、株分かれした部分は二年間生き残るので年中姿が見られる。
はじめは美しい紅紫色の花をつける観賞植物だったのに、先祖がえりしたためにすごい繁殖力をつけ、花もつまらない姿と色に劣化したまま猛烈な勢いで増えつづけているのである。この様子を、山仲間の小説家新田次郎君が昨年『春紫苑物語』として発表しているが、作家というものは物事をうまくつくりあげるものだと感心したが、同時にこんなつまらない草でも小説にまとめるには、大変な努力も必要だっただろう、と同情もしている。
とにかく、雑草というより悪草の部類だから、どんどん採って食べてしまうほうがいい。味は幸いに悪くない。しかも、見かけによらず、シュンギクに似た味と香りを持つ。」
▼まあ、ここまでけなされると、爽快である。著書は西丸震哉という農林省の人、本のタイトルが「野草を食べよう」だから仕方ないのかもしれない。いずれにしても、自分はハルジオンは可憐な花だと思う。この文に出会ってからますますハルジオンを意識するようになった。少しでも光を受ける白い花を見かけるとシャッターを押す。どんどん美しい姿を集めていきたい。
▼さて「野草を食べよう」によると、ハルジオンの料理法は、汁の実、煮物、いため物、揚げ物。ゆでてひたし物、和え物、酢の物。たしかにシュンギクに似た風味がある。
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