ロウバイ(蝋梅) ロウバイ科落葉低木
花期は1月〜2月、江戸時代の初期に中国から渡来した。唐梅(カラウメ)とも呼ばれる。花弁の色や感じが蜜蝋でつくったもののようなので「蝋梅」となったといわれる。花言葉は慈愛。
▼家の近くの梅林公園の入り口に、蝋梅の花が咲いた。ろう引きしたような半透明の黄色い花弁が芳香を放つ。この蝋梅の花と入れ替わるように、まもなくあたり一面、紅白の梅が咲き誇り、メジロが蜜を吸いにやってくる。群れをなしてやってくる。
▼赤い帽子の保育園の園児たちが二人一組、行列つくってやってきた。
その子たちのはずんだ歓声が、ひっそりとした枝々の下に鮮やかな生気をもってかけぬける。蝋梅の間を一塵の風が吹いた。春はここからやってくる。
▼気配ということを考える。
「遠く北の海峡の海辺で蝶々が数羽戯れている。彼らの羽の動きがあたりの空気をわずかに震わせる。それだけのことで終わってしまうのが常だが、驚くことにしばしばその空気のかすかな動きが次々に伝わって大きな波動を呼び、ついに気圧図をもかえて、海峡の南に大風を発生させることがある。」(井上ひさし:あてになる国のつくりかた:科学者からの手紙 より) この現象をバタフライ効果というらしい。
ひょとしたらこの世の仕組みは、こうしたとてつもない"ゆらぎ”によってなりたっているのかもしれない。だとしたら、五感や六感を総動員して、"ゆらぎ”がおこる気配を感じとれるようになりたいものだ。
▼この高層団地の谷間にも、まもなく春がやってくる。今年は去年のように唐突にではなく、なにやら様子を伺いながら、すーと入ってくる気配がする。
「おじさーん。」黄色い声に呼びかけられて振り返った。「おじさーん。柵の中に入っちゃだめだよ。草をふんじゃだめだよ。」しかられておずおずと退散する猫背の中年が一人、それをみていた老夫婦が笑った。 |