職場の花 3月10日
マーガレット/キク科キク属。カナリア諸島原産の多年草。英名ではパリスデージー、和名はモクシュンギク。ヘンリー六世の王妃マーガレットが三本のフランスギクを紋章したことや、スペイン・ナバラの女王マルグリートがモクシュンギクなどを好んだことなどから、フランスギクやモクシュンギクをマーガレットと呼ぶようになった。マーガレットという名前は、「真珠」というギリシャ語に由来している。明治中頃に渡来した。
花言葉は、誠実・貞節・慈悲・・・・
▼誰が活けたのか、職場の打ち合わせテーブルにマーガレットの花群れが登場した。ビルの地下にあり蛍光灯の明かりが頼りの部屋にこの白い花はよく映えている。
▼3年前、この職場の庶務担当をしていた。その時、3人のスタッフを採用した。皆、それぞれ個性を発揮し、不規則な職場に一定のリズムを奏でてくれた。3人は、まもなく契約の3年を終え、職場を離れる。それぞれに、贈る言葉を選んだ。2世紀のはじめ,ローマ帝国の皇帝マルクス・アウレリウスが書き残した「自省録」の中から探した。
▼好きなパソコンに打ち込み、この3年でホームページ制作のプロに見事成長したAさんには―ーー
「 君のおぼえた小さな技術をいつくしみ、その中にやすらえ。そして自分のすべてを心の底から神々に委ねた者、またいかなる人間に対しても自分を暴君にも奴隷にもなしえなかった者のごとく人生を送れ。」
▼たえず完璧を求めるBさんは、時に、他人にも厳しく、それを率直に言葉に出し、曖昧で事なかれを決め込んでいた庶務担を驚かせることがあった。でも、それが君らしい個性だと、今、思います。
「 すべて自然にかなう言動は君にふさわしいものと考えるべし。その結果生じる他人の批判や言葉のために横道にそれるな。他人はそれぞれ自分自身の指導理性を持っていて、自分自身の衝動に従っているのだ。君はそんなことにはわき目もふらずにまっすぐに君の道を行き、自分自身の自然と宇宙の自然とに従うがよい。」
▼苦情電話に出るのが嫌だと、仕事をはじめてすぐに配置転換を申し出て庶務担をあわてさせたCさん、あれからしばらく見ぬ間に、職場の雰囲気にも慣れ親しんだようでほっとしています。
「 君の分として与えられた環境に自己を調和せしめよ。君の仲間として運命付けられた人間を愛せ。ただし心からであるように。」
▼ 蛍光灯の明かりの下でマーガレットの白い花が次々と開いていく。送別の頃、突然現れた清楚な職場の花、花言葉は「誠実」である。
( ※参考 岩波文庫「自省録」 )
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