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            彼岸の春
         2008年3月1日

                  彼岸の森               彼岸の森   

▼何の意味もない思いつきに過ぎないが、彼岸花の咲き乱れない空っぽの森を歩きたい、と思った。それも春の彼岸を前に・・・・、こんな他愛のない思いつきばかりをバネにして暮らしている。
▼その巾着田の森は、古代、朝鮮半島の高麗から渡来した人々が愛でた訳がすぐわかるように、高台からみると豊壌の森の風格を今なお醸し出している。春、この里の農家で、彼岸花の球根、それも黄色と白色のものを手に入れ、そっと植え、道行く人を驚かせてみたい、と常々思っていた。その思いつきを素直に実行に移す気分に恵まれた。














 ▼まず、巾着田近くの農家をめざす。黄色と白色の彼岸花の球根は、一昨年の秋、その農家の軒先で無造作にばら売りされていた。その時、買わなかったのを後悔している。その後、球根が欲しくなって、いろんな園芸店に問いあわせたが手に入れることはできなかった。白と黄色の彼岸花をぜひ植えたい場所が二つある。一つは、父母の墓の前。この珍しい彼岸花が咲けば、人は物珍しさともに、父母の墓の前を訪れてくれるにちがいない。もう一つは、この夏、故郷で理髪店を開く姪っ子夫婦に送ろう。新しい店の前にこの珍しい花が咲きそろえば評判になり人が集まるかもしれない・・・・などという妙案が春の巾着田へ向かうエネルギーを沸き起こした。
 しかし、残念ながら目的の農家は雨戸で閉じ、声をかけても誰も出ては来なかった。閑散とした軒先で猫がしきりに顔をなめている。

気を取り直して、彼岸花の森をめざした。

▼まばゆい紅の花のない森を歩く、物好きは一人もいなかった。秋とは全く対照的な春の彼岸だ。彼岸花の緑の葉が絨毯となり、森の主役は様々な種類の雑木だった。
 スギ、ムクノキ、マユミ、クヌギ、コナラ、シラカシ・・・・こんなに多様な樹々のある雑木林だったのか、感心している。






















  ↑ スギ                        ↑ ヒノキ























                  ↑ シラカシ                   ↑ムクノキ

























 

だれもこない彼岸花の森で、剥き出しの裸樹を楽しむ。

忘れた時間を思い出させるように、額に冷たい雨粒がポツリ、ポツリと落ちた。

「おっといけない、傘がない、森をでよう。」


 そういえば、秋の彼岸、この森に入った時も、にわか雨が展覧会の終わりを告げてくれた、その時の風景を鮮明に思い出した。

   →2006年9月23日 彼岸

  →2006年9月24日 飄然と


 

2008年3月1日