●シクラメンの香り
シクラメン/サクラソウ科シクラメン属。
地中海を中心に自生しているが鉢植にされているのは、ギリシャ、トルコ、レバノンに自生するシクラメン・ペルシクムを親として改良されたもの。
花びらが上に反り返るので、篝火に見える事から牧野富太郎博士はカガリビバナ(篝火花)というをつけた。又、「ブタノマンジュウ(豚の饅頭)」という和名もある。これは、原産地の地中海地方で、その球根の形と実際に豚が球根を好んで食べるため、「ブタノマンジュウ(豚の饅頭)」と呼ばれていたのをそのまま訳したもの。
シクラメンの地下茎は、古代ローマではヘビの噛み傷を治す力があると言われ、お守りとして各家庭の庭に植えられていた。
病気見舞いは「シクラメン」の「シ」と「ク」がそれぞれ「死」「苦」に通ずるとして縁起が悪いと言う人もいる。また、花が炎を連想させると言うことから新築祝いにも不向き。さらに「嫉妬」と言う花言葉もあるため、誤解を招くような相手にに贈らない方がいい。
シクラメン全般の花言葉は、はにかみ・内気・嫉妬・遠慮・切ない私の愛を受けてください・疑惑。
▼シクラメンの花には香りがない。なのになぜ、小椋佳は「シクラメンのかほり」という題名をつけたのだろうか・・・
真綿(まわた)色した、シクラメンほど、清(すが)しいものはない
出逢いの時の、君のようです
ためらいがちに、かけた言葉に 驚いたように、ふりむく君に
季節が、頬をそめて、過ぎてゆきました
うす紅(べに)色の、シクラメンほど、まぶしいものはない
恋する時の、君のようです
木(こ)もれ陽(び)あびた、君を抱けば 淋しささえも、おきざりにして
愛が、いつのまにか、歩き始めました
疲れを知らない子供のように時が二人を追いこしてゆく
呼び戻すことができるなら 僕は何を惜しむだろう
うす紫の、シクラメンほど、淋しいものはない 後ろ姿の、君のようです
暮れ惑う街の、別れ道には シクラメンのかほり、むなしくゆれて
季節が、知らん顔して、過ぎてゆきました
疲れを知らない子供のように 時が二人を追いこしてゆく呼び戻すことができるなら
僕は何を惜しむだろう
▼シクラメンの花にこれといった香りはない。その事実を小椋佳は知っていたにちがいない。そしてあえて「シクラメンのかほり」とつけた。過ぎ去ったのは厳粛な事実ではなく曖昧な幻影だから。