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2014年04月05日

●原爆ドーム 対岸の桜



▼桜満開の広島の朝、久しぶりに平和公園でラジオ体操をして、ドームに向かって歩いた。

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▼被爆から来年で70年になる。被爆直前、この平和公園一帯は西日本屈指の歓楽街だった。銭湯、旅館、映画館、遊郭・・・それらは一瞬にして崩れ落ちた。瓦礫は撤去されることなくその場に遺され、その上に盛り土をして公園となった。粉々になった無数の人骨は今もこの下に白い層となって埋まっている。

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▼被爆直後は「70年間。草木も生えない」と言われた。その広島がいち早く平和宣言をして、残留放射能の不安と「向き合いながらも、着実に復興していった様は奇跡としか言いようがない。

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▼ 原子爆弾リトルボーイが炸裂した直下は、島病院という個人病院だった。そのすぐ近くに産業奨励館があった。軍都のイメージを脱して、文化都市広島として世界に売り出そうという気概の元に建てられた洋館だった。その隣にあった屋敷の長男として生まれ育った田邊氏と20年近いつきあいを続けている。疎開して奇跡的に助かったが、父母と弟は溶けて消えた。家族の眠る屋敷のあった場所は世界遺産の柵の中にあり入ることも出来ない。
「早くしないとみんないなくなってしまう。」せき立てられるようにして、田邊さんは少年時代の思い出が凝縮する、町を復元しようと心血を注いでいる。その姿を横で見ながら、なんとかその仕事を助け結実させることが自分に課せられた大きな宿題だと、肩にのしかかっている。

▼原爆ドームの対岸には2本のソメイヨシノの木がある。満開の桜越しに朝陽を受けるドームを撮影したいと思いカメラを向けた。枝に雀がとまった。「70年間草木もはえない。」といわれた70年後の爆心地の春である。

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桜の樹の下には屍体が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。
何故って、桜の花があんなにも
見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。
俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。
しかしいま、やっとわかるときが来た。
桜の樹の下には屍体が埋まっている。
これは信じていいことだ。・・・・・
        (梶井基次郎)

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