●"千団子"はいかが
栴檀(センダン )/ センダン科センダン属 落葉広葉樹 本州南部以南に自生する。5?6月に淡い紫色の小花をたくさん咲かせ、秋から冬にかけてオリーブのような黄色い実が熟する。材は軽くて柔らかく、キリの代用として工芸品がつくられる。別名,オオチ。花言葉は、意見の相違。
▲木枯らしが吹く中、裸枝にぶら下った無数の実が揺れている。遠くから見ると黄金色の花が咲いているようにみえる。冬の光が丘公園で出会った,これもハッとする光景だ。センダンの実は駆虫剤や殺虫剤に使われる。そのせいで、鳥も寄り付かず手付かずのまま残っているのだろう。
刻一刻変化する季節の流れから、この実だけが置き去りにされた感じもする。
▼センダンという名前の由来には諸説ある。その中で、一番、気に入っているのが深沢正氏の説である。
「私はセンダンの語源は"千団子"ではないかと思っている。千団子というのは、滋賀県大津の園城寺で、古くは4月16日、今は5月16日より3日間に行なわれる法会の俗称で、千団子祭とも千団子参りともいう。この御堂に祭る神は、千人の子を持つという鬼子神で、これに千個の団子を供えたところから、その名が起こったといわれる。この日、小児の健康、厄除け、安産などを祈願する人々が千個の団子を供えると、参詣の子供たちが争ってこれを持ち帰ったものだという。オウチの実は、それこそ無数の珠を連ねたようになり、冬に入り、葉がすっかり落ちたあと、黄色に輝く実が、枝一面に群がりついた様はまさに壮観である。この様子を千団子に見立てて、これをセンダンゴといい、さらに詰まってセンダンとなったのではないだろうか」(植物和名の語源より)
センダンの果実を団子に見立てた発想はユーモラスで面白い。冬の公園で、鳥についばまれることもなく、風にそよいでぶらりぶらりと揺れている黄色い実には、まさに千団子のゆとりがある。
栴檀(せんだん)の 実に風聞くや 石畳 <芥川龍之介>