●うすむらさきの仏様
仏の座(ほとけのざ)
シソ科の一年草
別名をサンカイグサ(三階草)、ホトケノツヅレ(仏の綴)、カスミソウ、クルマソウ。小川の南向きの土手に、赤紫のサルビアのような花を咲かせる小さな野草。ホトケノザの名は、対生してつく丸形の葉や、その葉が頂葉では幾重にも重なって、恰も仏の座、蓮台を連想させることからつけられる。サンカイグサ(三階草)という別名は対生する葉が立ちあがる茎に段上につくところからついた。ちなみに春の七草の一つに「ほとけのざ」があるが、これは正確にはキク科のタビラコのことで別のもの。
▼H先輩に誘われて、世田谷の瀟洒なお寺を訪ねた。車を降りた直後、小さなホトケノザが目にとまった。さっそく、シャッターを押した。共に充実した仕事を終えた休日の朝、H先輩の表情は一段と柔らかだった。H先輩といい仕事ができたことを祝福してくれるようにホトケノザがそこにあった。
▼青臭い考えだが、「ホトケノザ」は今は亡き両親の花と決めている。人のいい父、おせっかいで陽気な母、二人のおおらかな世界に包まれて瀬戸内海の町で育った。その穏やかな両親は、時折、今もホトケノザとなって、息子を励ましてくれる。「さて、これからどうする。」そんなとき、ふと道端に現れて、「それでいい。」と微笑んでくれるようにそこにある。
春の陽気の訪れと共に、今日も、ふとホトケノザに出会えてありがたい。