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2014年03月23日

●純白のサクラソウ


サクラソウ(桜草):サクラソウ科サクラソウ属の多年草。日本のサクラソウ類の代表で、日本では北海道南部、本州、九州の高原や原野に分布し、朝鮮半島から中国東北部へかけても分布するが、野生の群落をみることはまれになっている。かつて、埼玉から東京を流れる荒川の下流にはサクラソウの大群生地が各所にあり江戸時代の人々の行楽地となっていた。江戸中期、ここから株を堀り持って帰り、培養したのがサクラソウ園芸のはじまり。花言葉は神秘な心、勝者の寛容。
▼H氏邸のベランダに純白のサクラソウが咲いていた。普通、この種のサクラソウは淡紅色が多い。純白のサクラソウはめずらしい、さっそく、カメラにおさめさせてもらった。
▼あまり人付き合いが得意でない自分が、珍しく、H邸を再三訪ね、くつろいでいる。H氏の寛容なお人柄にもよるのだろうが、H婦人がいつもおおらかに歓待してくださるので、こちらもついつい甘えてしまう。婦人の作って下さるカレーライスの温かさは、なんともいえない。それがH邸を訪ねる目的となっているといわれても一概に否定できないから、情けない。
▼H邸のベランダには、ご夫婦の人柄を象徴するように、様々な野花がさりげなく配置され、雀も規則正しくえさをもらいにやってくる。その世話をしながら、流れる寛ぎの時間がいい。

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▼「写真に撮ってもらったの。よかったね。」婦人がサクラソウに語りかけている。微笑み語りかけられるサクラソウは幸せ者だ、とカメラをしまいながらふと思った。

●うすむらさきの仏様


仏の座(ほとけのざ)
 シソ科の一年草
別名をサンカイグサ(三階草)、ホトケノツヅレ(仏の綴)、カスミソウ、クルマソウ。小川の南向きの土手に、赤紫のサルビアのような花を咲かせる小さな野草。ホトケノザの名は、対生してつく丸形の葉や、その葉が頂葉では幾重にも重なって、恰も仏の座、蓮台を連想させることからつけられる。サンカイグサ(三階草)という別名は対生する葉が立ちあがる茎に段上につくところからついた。ちなみに春の七草の一つに「ほとけのざ」があるが、これは正確にはキク科のタビラコのことで別のもの。

▼H先輩に誘われて、世田谷の瀟洒なお寺を訪ねた。車を降りた直後、小さなホトケノザが目にとまった。さっそく、シャッターを押した。共に充実した仕事を終えた休日の朝、H先輩の表情は一段と柔らかだった。H先輩といい仕事ができたことを祝福してくれるようにホトケノザがそこにあった。

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▼青臭い考えだが、「ホトケノザ」は今は亡き両親の花と決めている。人のいい父、おせっかいで陽気な母、二人のおおらかな世界に包まれて瀬戸内海の町で育った。その穏やかな両親は、時折、今もホトケノザとなって、息子を励ましてくれる。「さて、これからどうする。」そんなとき、ふと道端に現れて、「それでいい。」と微笑んでくれるようにそこにある。

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春の陽気の訪れと共に、今日も、ふとホトケノザに出会えてありがたい。

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2014年03月21日

●遅れて、早咲きの桜


カワヅサク(河津桜):1月下旬から2月にかけて開花する早咲きの桜。花はソメイヨシノより濃い桃色。1955年に飯田勝美という人物が静岡県賀茂郡河津町で原木を発見。1974年に「カワヅザクラ(河津桜)と命名された。飯田氏が発見した原木は今も河津町にある。1968年頃からこの原木から増殖されるようになったという

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▼恒例になった「河津桜まつり」が終わり河津川に沿って3キロも続く、並木道が葉桜にかわっているころ、練馬の公園の片隅の1本の河津桜が満開になっている。紅白の梅の奥に、1本の桃色の桜は孤高の絢爛さを見せている。この公園の作った人に河津町に縁のある人がいたのだろうか。遅れて咲く、「早咲きの桜」の前で、その植木のいきさつを想像するのは楽しい。毎年、遅れて咲いているのを確認する目的の散歩を続けている。

▼頼まれて、この桜の前で若いカップルの2ショットを撮った。隣の群生の梅ではなく、この一本が選ばればれたことに、こちらも少し誇らしい気分になるのがおかしい。

2014年03月16日

●三脚据えて、じっくり構える

ミツマタ(三椏)/ジンチョウゲ科キミツマタ属(エドゲウォルチア属)。
花言葉は、意外な思い・強靭。


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▼ミツマタの黄色い花々。ようやく理想どおりの可憐な姿をカメラにおさめることができた。これも三脚を譲ってくださったH先輩のおかげだ。感謝をこめてゆっくりシャッターを切った。

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▼数ミリの小さな花が集まり、数センチの花群れをつくる。その小さな絢爛の世界をじっくり時間をかけて眺める。贅沢なひとときだ。

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▼20年前、ミツマタの枝を刈り取り山の斜面を下る年老いた農婦に出会った。刈り取ったミツマタを蒸し,ていねいに樹皮をはがし、和紙に必要な繊維を含んだ「白皮」を取り出す「しじり」という作業。かつてバブルの最盛期、中国地方の山間の村で見た仕事は、やがて工程の最後に出来あがるであろう札束の姿とはおよそ懸け離れた地味なものだった。「ミツマタの花、みたことあるかい。」その時、婦人の脳裏に浮かんだに違いない花模様をようやくカメラに納めることができた。

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▼還暦後、二度目の人生をもう一度現役に戻り、38年前の仕事を改めて辿ってみようと密かに決意している。その最初もいえるささやかな仕事がようやく一つの節目を迎えようとしている。その折りに、これまで気になっていた草木花を改めて撮りはじめる。今度は、三脚を据えて、じっくり対象と向き合いカメラを構えて、丁寧に記録をしていきたい。

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